お早う、亜紀子ちゃん。
子供の頃、わくわくしながら見た未来の想像図鑑。便利な道具や乗り物が発明され、人々はどんどん豊かになり、誰もが楽しく暮らせる夢の世界。自分が大人になる頃は、きっとそんな時代になるのだと思っていた。
けれど、なってみたらこのとおりだ。二十一世紀になって確かに便利な道具はいろいろ発明されたけれど、肝心の人は幸せになっているだろうか。
相変わらず、悩みや苦しみ、争いは後を絶たない。悲しいこと、理不尽なこともなくならない。
そうだ、子供の頃感じたとおりだ。相変わらず大人の世界は変わってないんだ。相変わらず争ってるんだ、面倒くさいんだ。
悪い面ばかり見て悲観的になっているのかもしれない。でも、大人の世界で僕は随分と汚れてしまった。その汚れはもう取れやしない。
亜紀子ちゃん、こんな汚れてしまった僕を抱いておくれ。今は時間がないけれど、週末が来たらきっとまた……。
それじゃ、今日もお仕事行ってくるよ。必ず帰ってくるからね。